昨日今日と日本からの出張者が来ていたので、彼らと一緒に仕事をしたりご飯を一緒にしたりしてしばし語り合っていました。2人の出張者だったのですが、一人は出向元の会社から来たKさん、もう一人は僕の出身大学から来たF先生でした。
今日の夜は夕ご飯にスイス料理レストランでスイス名物のラクレットを食しました。ラクレットとは、フォンデュの先祖に当たるようなものであり、溶かしたチーズをパンやジャガイモなどに乗っけて食べる家庭料理です。フォンデュの方が後から出来たらしく元々はラクレットがスイスの家庭料理の定番であったそうです。
ラクレットの付け合わせにはピクルスと干し肉というのがこれまた定番です。これをスイスの草原の中の山小屋で食べたらまさにハイジの世界ですね。ハイジで良く出て来たおじいさんがチーズを暖炉で溶かして、それをハイジがパンに乗っけて食べるシーンがありましたが、あれこそまさにラクレットです。今では電熱器でチーズを溶かす近代的な物が主流ですが、元々は山小屋料理だと知れば納得出来る様なきがします。
さて、F先生との話は非常に面白くまた大学の懐かしい話なども聞けて思わず会話がはずんで夜も更けてしまいました。しかし、F先生独自の最近の日本観には共感出来る事が多く、これまた懐かしい大学の雰囲気を感じたものでした。
スイスはコンビニがなく、お店も大体7時前後でレストラン以外は全て閉まってしまう。日本中のコンビニの深夜の電気代はおよそ原発一基分に相当する。自販機が100メートルおきにあることは日本の名物の一つであるが、日本中の自販機の電力は原発半機分の電力に相当する。電気ポットの文化は日本だけであるが、元々は病院のニーズ(お湯がすぐにほしい)から発祥したものが家庭に普及したものであるが、はっきり言って電力消費の面から見ると生活に対する必要条件ではない。などなど。日本が逆に利便性を追求しすぎた生活を送っており、スイスに暮らしていると日本の無駄が見えて来て、F先生も実感している事を共有出来て中々面白かったです。
スイスははっきり言って保守的です。周りを列強で囲まれ続けた歴史が長い事もあって、必然的にそうならざるを得ないのですが、日本と似ているという事をしきりに言われていますが、現在ではそうも言えないのではないかと良く思います。日本はアメリカ主義ですよね。これはスイスの人たちにとっては信じられない事だと思います。スイスはイギリス、フランス、ドイツ、イタリアから如何にして身を守り自国の利益を守るかを必死になって考えているのです。それも国としての価値を見いだすための戦略です。日本はこのような戦略が欠如していて、要するに「何事に対しても今とちょっと先が良ければなんでもいい」のです。50年、100年先は考えていません。
最大の問題である教育に関しても意見を交わし合いました。基礎研究が消え去りつつある日本の教育現場では、スイスからみると信じられない事態です。スイスは徹底した基礎教育を遵守しています。例えば、数学で言えば純粋数学を重んじていることこの上ありません。例えすぐに立たなくとも50年後にスイスの礎となり、どこでも通用する応用として発展できるのです。日本は最近は目先の成果を重んじるあまりに、はやりの教育にあっちむいたりこっちむいたり忙しいのです。チューリヒにあるスイス連邦工科大学はアインシュタインやレントゲンなどのノーベル賞受賞者も出しています。本当に目立たないのですがエリートの実質的な重きが十分感じられます。
大学は新しくトレンドの環境社会学とかいう訳のわからない学部が出来て、いきなり応用に走り出し基礎がすっぽり抜け落ちる。その結果、口先は立派でなんとなく理屈は通っているのだけれど、基礎教育をベースにした長続きする成長がない。スイスでは基礎中の基礎を勉強し専門はそこから自分の選択により高度化していく、というステップを確実に踏みます。スイス側も色々問題があると思いますが、日本は基礎学問の綿密な学習と考察経験が絶対的に少なくなっているから、どんどん数学オリンピックなどでも年々順位を下げいてるのです。
最近、モデルになる国はフィンランド。この国はロシアの戦後の長きに渡る占領から身を守り、その後自国の戦略を立て直して、教育改革を中心に復興を遂げて、現在NOKIAなどの携帯電話分野などが大発展を遂げています。フィンランドの教育方針は、大企業に身を任せる様な保身的な教育はせず、一人一人が起業出来るくらいの自立精神を備え付けるための教育を行っているそうです。そのために、先生などへの待遇は非常に良く、また個別指導に近い様な教育を行うそうです。授業は結果よりもプロセスを重んじる方式。かのLinuxもフィンランド人の大学生が開発し無償で提供しています。他の科学応用分野の企業もどんどん恐るべき速度で成長しています。アメリカに占領されていた日本で、長きに渡りアメリカの影響下にあったまねの好きな日本ですから、今度はフィンランドなどのまねをしてもいいのかもしれません。
こちらの友人のMさんも言っていましたが、日本はある意味「夢の国」です。なんでも物があって、食べ物はおいしいし、コンビニはちょっと歩けばあるし、エンターテイメントはそろっているし、異文化も色々アクセス可能、などなど。確かに他の国から見れば天国かもしれません。その天国自体がふぬけなエンジェルを作り出しているのかもしれませんね。昔の日本の学生などは日々の勉強に全霊をかけるくらいの勢いがあったようです。僕の世代ですらそういう事がわからなくなっているのですから、今の学生ってどうなんだろう?って考えてしまいます。
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