大分間があきましたが、地球観測って?その4です。今回は「農業」について長々と述べたいと思います。
まずは、「農業」と「地球観測」となんの関係があるの?ってのが最初の質問かもしれません。まあ、少し考えれば自明の理だと思いますが、農業ほど天候、土壌、気候、水系に関連している重要な人間活動はありません。生きて行くための糧になるので、稲や小麦、トウモロコシ、野菜などの生育を監視する事は非常に大事です。自明の理ですよね。
ただ単に生育状況を監視するだけではなく、気候変動によって植物の生育分布も世界的に変化していきます。それらをモニターして、どの地域にはどの植物の生育が適しているのかを判別することも大切です。また、干ばつや洪水などが起こった時に、どの程度の畑が被害を受けているのかを観測する事も大切です。
世界的に見ると、当然日本は畑作面積が国土の面積に比べて占める割合が低いし、かつ多くの食物を輸入に頼る部分が大きいので、農業の重要性が世界に比べて一般の人たちの意識にその重要性が浸透しにくい面もあるような気がします。アメリカや中国などの広大な面積を持つ国家は、畑作面積が日本の比ではないため、その監視についてはかけるコストの比率も違ってきます。
こうした国家は地球観測衛星を使って農業をモニタするのです。Landsatという衛星はその代表的な衛星であり、土地の利用の変化などを広範囲で監視する事が出来ます。
国連の世界食料機関(WFP: World Food Program)や食料農業機関(FAO: Food Agricultural Organization)は、世界の食料供給事情を監視し、貧困や自然災害に伴う食料危機などの対策を行っています。我が部署はこうした機関とも連携しながら農業の監視から食料危機への対策の実行をスムーズに流して行く必要があるのです。
日本の身近な例で言うと、稲作の年毎の豊作・凶作はいわゆる天候か災害に左右される訳ですが、それらは様々な地球観測衛星と地上の観測データとその解析作業によって判別されるであろうということです。現在では、天候の長期予報によって大体の稲作の吉凶の予測はされますが、精度の高い予報、ならびに極めの細かい稲作の実態や被害を受けたときの程度などは中々正確な情報が入りにくいのが現状だと思います。農家にとっては一段実用に供したデータと情報があれば切実に望まれるでしょう。
一方、最近では衛星だけではなく、センサーネットワークと呼ばれる技術によってネットワークでつながれた地上での監視装置(気温、湿度、風向き、気圧、ライブカメラ、等)を畑に設置する事によって、データを収集し解析することによって、アクティブにきめ細かく農業の戦略を練るような動きも出て来ています。
世界的な意味では、世界の人口に対して世界の農業需要がどの程度あるのかが一目でわかるような監視システムがあれば、政策決定者にとってはわかりやすいでしょう。例えば、アメリカのトウモロコシ収穫が今年は悪く日本に十分な供給が出来ない、しかし一方でヨーロッパでは余分が出る程のトウモロコシが今年は収穫出来た、ということがわかれば外務省や農水省はなんらかの動きをするかもしれません。
もう一つ、日本で身近な話題は漁業でしょう。農業の関連項目として扱いますが、漁業の方が日本にとってはその監視の必要性が大きいと思われます。特に、日本は黒潮や親潮の海流の動向によって漁獲の場所が変わり易いため、海流とそれに関連する日本海や太平洋の海水温、クロロフィルの監視を行う事は重要です。これらの常時監視が出来ればどこに船をだせばいいのか予想が出来ます。その分船の燃料も節約出来るのです。海の監視については、衛星が広域の監視で重要になってきます。どうしても、海の場合には船やブイの監視では限りが出てきます。実際に衛星データを使った漁業の監視については、商業ベースの利用に進み始めています。
日本は、農業回帰指向が高まっている様ですが、その難しさは農業を経験した人でしかわからないと思います。農業は片手間では出来る事ではなく、時間のかかるつきっきりの仕事に等しい大変な作業です。気候変動でこうした重要な農業がある日失われるような事があると、我々のおまんまの食い上げにつながってくる訳です。
次回は、「気候」についてです。
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