2006年12月9日土曜日

CERN訪問ツアー

雨の降る肌寒い土曜の今日、JSAGが主催するCERN訪問に参加してきました。CERNは2回目の訪問ですが、ツアーで中の素粒子加速器を見せてもらえるとの事で楽しみにしていきました。今回は少し専門的ぶった解説かもしれませんが(もちろん僕が分かった範囲でですが)、以下写真付きにて紹介します。



まず、CERN(Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire)とは、英語ではEuropean Organization for Nuclear Research、日本語では欧州核研究機構と言います。やっている事は、僕は今まで素粒子物理だと思っていて事実はその通りなのですが、今回の見学会で説明してくれた際に使われた表現が"Pure scientific and foundamental research"、つまり「純粋科学と基礎研究」であり、僕は非常に妥当な言葉だと思いました。

もう一つ、なるほどと思った説明として、CERNの4つの事業の柱として、「宇宙の起源に迫る研究」「80カ国以上からおよそ7000人の国際研究者からなる国際研究施設」「先端応用テクノロジーの推進」「若手研究者や技術者の育成」です。最初に研究施設としての精神をばんと突きつけられた感じで確固たるポリシーを感じる事が出来ました。

一番のCERNの目玉はやはり素粒子加速器を使った、宇宙の起源、物質の起源の探求であり、その素粒子加速器があまりに規模の大きい施設であるため圧倒されます。写真は、その素粒子加速器の中心となる部分の模式図です。加速器(LHC:Large Hadron Collidar)は現在建設中ですが円周27kmというスイスとフランスの国境をまたがる大規模なものです。加速器は超伝導を使ったコイルにより電荷を持った素粒子(陽子や電子、電子は加速器での制御が難しいため現在は陽子のみ)を光の速度の99.99967%まで加速し、反対側から加速された同じ粒子と衝突させて、その後に起こる現象(新たな粒子の生成など)を観測し、初期の宇宙で起こっていた現象を再現しようというものなのです。

初期の宇宙というのは、今の宇宙にある様な星などの確固たる物質が存在していたのではなく、ビッグバン後に様々な素粒子が超高温の中を光速に近い状態で衝突しまくっていたという(すごく簡単に言っていますが)、ちょっと想像できない世界であることが想定されています。それをこの装置で再現するというのですから壮大な事この上なく、かつ初期の宇宙で何が起こっていたかを再現出来れば宇宙の起源や物質の起源もわかってくると考えているのです(原子は何で出来ているのか?陽子や電子は何で出来ているのか?宇宙の構成要素とは何か?などなど)。



これが加速器の一部で衝突実験を行うモジュールになります。ATLASと呼ばれています。円周27kmの加速器には同じ巨大測定器が反対側にもう一機(CMS)が取り付けられています(これはフランス側にあります)。素粒子が通る道はほんの数センチの管なのですが、それを取り囲むように、巨大な超伝導コイルによる粒子加速モジュール、衝突した際に飛び散る素粒子や放射線をブロックし測定する何重もの巻き寿司の様な隔壁兼測定装置などでおよそ直径が20数メートルあるそうです。

日本の高エネルギー加速器研究所(KEK)も技術参加しています。強力な磁界で加速器の建設費は約5000億円にものぼるそうです。すごいですね。稼働は2007年からだそうですが、一度火を入れると24時間態勢で運用が続くため容易には止められないそうです。



反対側からみたATLASの写真です。コイルのパイプが見えます。中心のは巨大なコイルです。なにしろ巨大な建設物です。



この巨大な建設物が地下100メートルの所にあるのです、加速器が27キロの円周の規模なの事と、放射線などの対策のためにこのような深度の地下への建設が行われたそうです。



今回案内していただいた方は中国からの研究者の方でした。非常にわかりやすい説明で質問にも真剣に答えてくれました。

もう一つ忘れてならないのが、CERNと言えばWWW(World Wide Web)発祥の地ということですね。そもそも、なんでWWWみたいなものが発明されたのか今回来てみて初めて分かった気もします。加速器から得られるデータというものは非常に膨大で、情報処理という問題が如何にこの研究所で切実かつ大きな問題かがわかります。加速器からのデータは24時間随時衝突後の電力データとして絶え間なく流れてきます。それらを整理し、処理し、結果を蓄えるという作業は計算機と情報処理の世界です。

WWWはこれらの情報整理の観点からデータ等の共有整理、アクセスというCERNとして必要不可欠の技術として生まれて来た訳で、それが今日さらに発展して全世界に広まった事を考えると、すごい事だと思います。また、現在ではさらに新しい技術で日本でもちょくちょく新聞で目にするGridという分散情報処理技術がCERN でさかんに検討されているようです。

今回の見学ツアーは非常に有意義でした。国連の各機関でも是非こういうツアーをやってほしいものです。

<今日のビール1>
スイス産、ARTISANS BRASSEURS, CALVINUS BLODE BIO、アルコール度数 5.2%、ジュネーブの地ビールです。完全な有機生産の様で自然のままの味わいでおいしかったです。瓶も完全リサイクルの様でお店に持って来てくれたら 50サンチーム変換があるとのこと。



<今日のビール2>
スイス産、ARTISANS BRASSEURS, CALVINUS BLANCHE、アルコール度数 5.2%、上の兄弟ビールで白ビールです。

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