2007年9月23日日曜日

Aletsch Glaicer

久しぶりのジュネーブでの休日の第2弾です。実は前々から一つ自分でやってみたい事があって、せっかくスイスにいるのだからここだけでしか出来ない事をやりたいと感じていて、それは何かというと、氷河について調べてみたいと言う事です。仕事柄地球環境問題には敏感にならざるを得ないのですが、今の仕事は正直実務ではありません。割り切って言うと国連特有の調整業務なので、実際に環境の測定や調査などはしません。(注:調整業務も大切な事はもちろんです。)

しかし、調整業務の罠は現場を理解しない架空、あるいはバーチャルな仕事に陥り易いということ。頭で考える事と、体を使って自分で動いて体験する事は自然界の摂理を理解する上で、どちらも必須なのです。ごたくは以上にして、そういう訳で非常に単純に、スイスの氷河が地球の温暖化でどのくらい溶けているのだろう?という課題を立てました。

この課題は既に研究されつつあります。スイスでもチューリヒ工科大学(ETH)などで世界の氷河の現状を収集しており、氷河はここ最近は確実にその体積が減って来ているとの事です。僕も、スイスで氷河を個人的にですが、少し研究してみたいと思っています。そこで、今日はその予備調査件、登山の一環として、世界遺産に指定されている、ヨーロッパで最長のアレッチ氷河を観測に出かけました。

まずはGoogle Earthによるアレッチ氷河周辺の外観です。



以前、昨年に一度ユングフラウヨッホに行った際に、アレッチ氷河の最上部は見たのですが、今日は氷河の全体が見える場所から見てみたいと思い、Brigから Fieschに入り、ロープウエーを2回乗り継ぎEggishornから氷河の全景が見えると言う事で行ってみました。写真ではアレッチ氷河真ん中の長い白い曲がった筆の様な物です。両方が山に挟まれています。

そして、早速Eggishornから撮った写真をいくつか。



まずは最上段から撮ったパノラマ全景です。氷河の長さ24キロメートルの勇姿は流れる美しい本当の川の様でもあるし、神秘な聖域でもあるかの様です。世界遺産になるもの疑い様のないという所でしょうか?実は、この写真を撮るためにロープウエーからさらにEggishornの頂上まで登ったのですが、それが結構きつく、辺り一面岩場でありかなり急な斜面で高度も高いので、相当に疲れました。



ロープウエイの頂上です。ここで2869メートルです。ここだけでも相当高く周囲が360度見渡せる高所です。





そこから、さらに山の頂上まで写真上の様に岩場を2926メートルまで登りました。この岩場が危険ではないのですが、元々高所の上でこういう足場の所を歩く事が結構恐怖を呼びました。写真下はEggishorn頂上の印です。子供も親に連れられて登ってきました。元気です。ちとちゃめっけがありますが。。。



話を氷河に戻します。氷河の頂上付近を撮ったものです。これを見て気づくのが、アレッチ氷河は上流で3本の合流があると言う事。そのためか、本流には2本のまるで雪上車が通った様な線が引かれていて3本の流れが束ねられた事がわかります。上流は白く平坦な地が多いのが見て取れます。



一方、中腹を拡大してみると、土の汚れからか黒い表面になっている所が多い事、また特徴的な連続性のあるクレパス模様が象られています。氷河も一日数十センチのスピードで流れている実際の川と同じ様なものなので、川の流れに伴う力の作用によりこうした模様が出来上がると思われます。下流は中流と同じ様な様相ですが、最後は溶けた氷河の水が湖になっています。アレッチ氷河以外にも周囲には大小様々な氷河がある事がわかりました。高度の高いアルプスの万年雪と複雑な地形がこうした氷河の姿を形作っている様です。

実際に氷河がどのような状態にあるかの研究の測定方法はいくつかあります。氷河の長さ、厚さ、と言った単純な要素の他に、雪質、氷の質、温度分布などを調べて溶け具合なども調べる必要があります。周囲の気象条件も正確に把握しておかなければなりません。こうした測定/観測のためには一人の人間がやるには限界があります。そのため、いくつかの分野の研究所が連携し合う必要があるのです。

実際に観測となると、氷河に付きっきりで泊まりがけの観測になります。これは僕には無理なので、どうしたら良いか・・・と考えたのが人工衛星のデータを使う事です。人工衛星の広範囲なデータを使えば自分で歩いて調べる必要はなくなります。但し、データの検証のための地上のデータは必要になりますが。

衛星から分かるデータにも精度と要素の限度がありますが、Google Earthでも出ている事ですし、少し踏み込んでもいいかと考えています。詳細なプランが出来たらまた少しづつご紹介出来ればと思っています。

さて、次にEggishornを降りて、一つ下のロープウエイ停留所のFieschAlpからハイキングすることにしました。どこに行ったかと言うと、実際に氷河のすぐ側まで近寄れるポイントがあるので、そこまで行ってみました。



しかし、道のりが長くハイキングといっても中級以上の少し難易度の高い、これまた疲れる行程でした。およそ往きで2時間、帰りで2時間半ほどかかり、くたくたになってしまいました。写真は、山中腹を横切るハイキングコースです。長い!



途中、1キロメートル程度の長ーく、暗ーい、まっすーぐのトンネルを抜けて、またしばらく歩いて、ようやく氷河の側面に近づいてきました。




ついに氷河と直接のご対面です。ここに来るまで運動不足もあり相当疲れましたが、人間目的意識があると動ける物で、がんばって到着できました。ちなみに、周囲にも多くのハイキング客はいましたが老人がかなり多かったです。皆元気です。所で、氷河の厚さの想像がつきますでしょうか?人が下の方にいるのですが、比較すると氷河の厚さは10メートル以上になるようです。スケール感覚が鈍ってきます。



さらに、近づくと、脇の湖から流れ込んで来た水が氷河の下に滑り込み、地下水のような様相を呈していました。氷河の下の地下の水脈の謎です。実は、この場所の湖はメイエレンゼー湖と言って、氷河の脇にある氷が浮かぶと想像してきた湖だったのですが、残念ながら湖は普通の小さなものでした。季節ものなのかもしれませんが、温暖化の影響もあるのかもしれません。



氷河の上を近くから撮影しました。やはり砂などで表面が黒くなっており、クレパスも整然と出来ています。氷河を歩くツアーがあるのですが、ガイドと一緒でないと危険です。クレパスに落ちたら大変ですからね。



余談ですが、今回のハイキングは非常に道のりが長く、かなり疲れてしまいました。リュックには水と甘い物が必須です。この有名なトブルローヌチョコレート、良くお土産で買って行く事が多いかもしれませんが、実はこうしたハイキングや登山のためにの物で必須である事に気づきました。本当においしかった。あと、氷河のわき水も飲んでみましたが冷たくて最高でした。

以上、長々と書きましたが、疲れて来たので、最後まとめを書いて、今日は寝ます。

まとめ
その1:氷河の観測を個人的には出来ない、目標と対象スケールを絞った方がいい
その2:実地観測は体力の問題も大きい、普段の体力造りが必須
その3:人工衛星のデータは使えそう
その4:何を計る?(氷河の長さ、氷河の氷の量(高度と体積分布)、氷河の表面形状、氷河の色、季節変化、経年変化など)
その5:今回あまりインスピレーションみたいなものは湧かなかったので、あまり具体的な方向性が定まりませんでした。

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