2008年5月21日水曜日

BOINC

今日もお宅な理系の話。BOINCってご存知でしょうか?検索したらすぐに引っかかっるのでわかりますが、広義の意味での分散型Gridコンピューティング環境を実装したものです。はい、なんの事かさっぱりわかりませんよね。

昔、SETI@homeというのが十数年前に出現して、地球外知的生命を探す電波天文学の分野で、宇宙からの信号を解析するためのコンピュータ資源を世界中のリソースが空いているコンピュータのCPUを借りてバックグラウンドで計算処理し結果を送り返す、という途方もないアイデアがありましたが、それがある時期非常に受け入れられて、世界中のコンピュータの余っている処理能力を借りて計算することが流行りました。

仕組みとしては、コンピュータでやらせる科学計算処理が、一組織のコンピュータで処理させるにはあまりに膨大で時間がかかるものである場合に、データを細切れにして、インターネットで送付するにも耐えうる、かつ個人のPCでも処理出来るくらいの少ない処理能力で済む形にしてあげて、サーバから処理ソフトウエアと共に配布し、結果だけ受け取るというものです。

昔は、SETI@homeだけが単一のプロジェクトとして存在していましたが、今ではBOINCの枠組みの元で、気候変動解明のための気候予報シミュレーション、CERNに代表される粒子加速器から得られる量子力学解明のための処理、生命工学のためのシミュレーション、等々、とにかく膨大な計算処理が必要なプロジェクトが参加しています。

こうした分散環境での処理を実現するために、Gridという技術枠組みが何度かコンピュータの世界では注目されていました。その先例として、電力網の事をGridラインと呼ぶ事があるそうですが、まさに電気をコンセントをさしたら得られるような感覚で、コンピュータをインターネットに差し込めば、必要なデータをいつでもどこでも得られる感覚からコンピュ−ティンググリッドとして、その技術の枠組みが広まっているのです。

これも、昨日の議論と同様、他との接続と言う意味で、インターフェースの規格化の問題が半分です。コンピュータ同士のデータ共有と処理に関する規格さえ規程してしまえば後は実装の問題です。とかく最近はコンピュータに限らず、物事は分散型で一極集中という概念は嫌われがちです。人間社会で言うと、資本主義はそういう分散型的な考え方ですよね。社会主義は一極集中型になりがちです。

こうした概念を押し進めて行くと、段々と責任の所在というものが曖昧になってくる気がします。事実、インターネットというものが既に責任の所在はあいまいです。インターネットの線を提供しているのは誰だかわからないからです。我々が払っている使用料は僅かにラストマイルのみなのです。日本からアメリカのサイトを見ても、アメリカまでの回線使用料は請求されませんよね?

物事の役割分担自体が既にスタティックではなく、ダイナミックになっている。タスクと一緒にインフラが順応し、結果だけが効率的に出てくれば良い仕組みが広がっています。誰が何をしたのか?と言う事はもはやこうした仕組みの上では必要がなければ問われないのです。

こうした概念は既に実装レベルで検討されていて、Webの世界ではセマンティックとかオントロジーとかの概念で研究されています。情報の意味を正確に捉えるための仕組みのみを規程して、コンピュータやOSの区分、動作環境、などのインフラは全く気にしない。情報の流通を如何に効率的に促進させるかが主眼に置かれる時代になってきているのです。

今では、誰でも家電の様にパソコンとインターネットを使う時代です。情報もWikiの様に誰もが検索すれば参照できる時代であり、人間のメモリ自体が必要なくなってきている感じです。検索が最大に効率化されれば、考える能力以外は必要なくなる可能性があります。

さらに、この考えをさらに推し進めて行って、知のネットワークを一人歩きさせる事が出来れば、ニューラルネットワークから人工知能(AI)までの技術が確立します。これとロボット技術を組み合わせれば鉄腕アトムが出来るでしょう。先を読める技術者がいれば、後30年後にアトムが作れると思うかもしれません。

BOINCに話を戻しますが、どちらかと言えば技術者の独りよがりの興味がそこそこの技術者や興味本位のユーザに受けている感がまだ否めませんが、面白いソフトであり、人間の将来の科学技術の行く末までも考えさせられるものではないかと思いました。

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