応用分野は非常に広く、土地計画の分野だけ取ってみても、土地利用の状況を把握するために不動産、農業、保険、等々の様々な業種で活躍します。使用されるデータは、通常の地図を電子化したものから、広域の情報として人工衛星の画像情報、スポット的な詳細情報として現地調査による実物情報、などを3次元的に、あるいは時系列的に解析する事が出来る様になっています。
最近ではコンピュータの日進月歩の能力増大によって、量と種類が膨大なデータの扱い、データの加工処理パフォーマンス、複数のコンピュータをネットワークで接続することにより、データの共有化やオンデマンドのデータ処理などが可能となってきており、より手軽に、また高機能のGISを使う事が出来る様になってきています。
簡単なGISの一例という意味では、既にGoogle Earthがその簡単な例となるでしょう。解像度の高い人工衛星のデータと地図情報や地物情報などを簡単な操作で重ねることによって、重ね合わせによる地球の地表の状態、土地利用の状況などが確認出来ます。
但し、GISは単にあるデータを見るだけではなく、元の生情報を加工しGISに違うデータを重ね合わせるためのデータ入力、処理、管理機能を備えたものでもあります。特に、違うデータ同士を比較する場合には、その処理工程で膨大な作業が必要となります。例えるならば、空間と時間のスケールが違う二つのデータ同士を上手く重ね合わせるにはどうすればいいか?
一例としてあげると、カーナビにもある問題ですが、地図を規程するための測地系の規程は大きな問題です。地球は楕円体のですが、その楕円を最適化したいくつかのモデルがあります。そのどのモデルを使うか、またその座標を定義する3次元の座標系をどう規程するか、の二つをまず共通認識で持つ必要があります。
測地系の定義がばらばらだと重ね合わせた時にずれが生じます。現在は、世界測地系が日本でも共通的に用いられる様になりましたが、それ以前は日本は日本測地系というものを使っており、東京付近では400メートル程の世界測地系とのずれがありました。
まずは、この測地系という基準系をしっかり共通にした上で、データの入力、処理、管理、解析に至る工程をスムーズにするために、様々な国際的な取り決めによる標準化が必要になってきます。最近では、インターネットで情報流通がどんどん盛んになっていますが、クリアリングハウスという言葉に代表されるように、世界中に散らばっている膨大なGISの源泉データをどのように共有化できるかを実現するのが、この仕組みになってきます。
クリアリングハウスは、メタデータと呼ばれる源泉データの属性情報のデータのインターネット経由での共有化のための情報システムになります。ここら辺から難しくなってくるのですが、この属性情報を如何に第3者に分かり易く、かつ標準化して書くかによって流通のスムーズ性が決まってくると言っても過言ではないでしょう。このメタデータの流通が高まれば、その後に引き続いてデータの流通も行われるようになってくるのです。
僕の仕事の一部はこうしたことを長期的にやっているのですが、やはりデータをそろえて整備するというのは一朝一夕では不可能です。また、特に一部の地図情報などは機密扱いであったりして、その情報が環境などに大変有効であったりするのです。
一例をあげると、標高情報です。現在、アメリカは90メートル分解能の標高情報は全地球の情報としてフリーで提供しています。しかし、90メートルでは例えば洪水災害などで被害の推定などをする場合には、粗い情報なので、より細かい情報が求められます。しかし、アメリカは30メートル以下の解像度のデータを持っているにも係らず、国家機密であることを理由に開示しません。
こうしたデータの開示制限も大きな問題になっています。気候変動や環境問題、災害などはデータの利用がいち早く適切な機関に利用してもらうことが求められます。GISでインターネット経由で瞬時に処理されたデータを見る事が出来たら、災害において対策の時間が大幅に短縮されることでしょう。災害などが起こると被害の規模を推定するのがまず困難です。例えば、夜間に地震が来た時には、被害の規模がわかるのは明け方になってからです。
それ以前に、例えば人工衛星の夜間でも地表の状態が認識出来るレーダーデータを1時間以内に入手出来たら、消防署や警察などは手を打つのが早くなるでしょう。あるいは、洪水の決壊の危険度の情報をあらかじめデータベースにしておき、オンデマンドで入手の希望があれば、即座にインターネット経由で世界中に送る事が出来る、となれば自治体などで有効活用されるでしょう。
こうした地理情報の共有化を進めているのは日本では国土地理院が窓口になっています。国際的にはISOが標準化の取りまとめ窓口です。ISOも多くの規格を規程していますが、地理情報はその一つの技術委員会が請け負っており、TC(Technical Committee)211番がその担当になります。また、最近ではメタデータの記述としてXMLが注目されており、Webを利用したGISの利用も徐々に整備されつつあります。Google Mapなどがその良い例ですね。
昔はGISは兆円規模の産業になると言われてきましたが、Googleがその先鞭を切っている感じです。今後の、多くのデータのどれだけ流通が進んで行くかが、大きなキーの一つであり、それがどれくらい利用されて、どれくらい人間の生活に変化が出るかが注目されると思います。
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